会社設立はとても簡単です。
行政書士や司法書士にお願いすればいいんですが、建設業を営む場合は絶対に外せないポイントがあります。
行政書士や司法書士に全部任せたらだめなの?
自分でできるかどうかわからない・・・
という不安をお持ちではありませんか?
そこでこの記事ではそんな建設業での会社設立という事例をもとに、建設業許可取得が必要な方のために説明していきます。
具体的には
- 個人と法人の違い
- 法人の種類
- 会社設立の流れ
- 建設業許可を取得する場合の会社設立時の注意点
- 建設業での会社設立のまとめ
の順番にご紹介していきます。
会社設立しても建設業許可が取れないなんてことのないように建設業許可の要件と合わせて確認していきます。
会社設立について
会社設立といっても、世間では個人事業主でも会社を作ったなんて言う人がいますが、個人事業主になるには会社は不要です。
会社というのは「営利を目的とする社団法人」であると言われます。
つまり、個人事業主は「法人」ではないので会社ではないのです。
この辺の定義のお話は実際の設立においてはあまり関係ないので、そんなもんなんだと思っていただくだけで結構です。
次に、会社といってもいろいろあります。
身近な例としては、「株式会社」です。また、最近増えてきた会社形態は「合同会社」です。
「株式会社」と「合同会社」の違いやメリット、デメリットを把握していますか?
両者の違いは法的な違いだけではなく、取引先がどのような印象を持つかという点でも重要なポイントになります。
今から、「個人と法人の違い」を説明したうえで、「株式会社と合同会社の違い(法人の種類)」について説明していきます。
それでは、「個人と法人の違い」から見ていきましょう。
個人と法人の違い
個人と法人の違いはなんでしょうか。
決定的な違いは次の点があげられます。
個人
信用が低い
個人事業主は本人が全責任をおい、契約も直接本人との契約になります。
そのため、事業としての継続性がなく、資金力もないので、大きな取引をする場合、相手にとってみればリスクになってしまいます。
そのため、一般的にみると、個人事業主は法人と比べて信用が低いです。
個人が全責任を負う
自己資金が1000万あり、仕事で2000万の負債を出してしまった場合、個人事業主は2000万円全額の責任を負います。
建設業許可は個人に対して与えられる
個人事業主でも建設業許可の要件を満たしていれば建設業許可を取得することはできます。
ただし、ご子息や親類に事業を譲りたいと思った場合に、問題が発生します。
建設業許可は後継者に承継されないのです。
一度、廃業届を提出したうえで、再度、建設業許可を取得しなければいけません。
当然、廃業してから再取得までの期間は、建設業許可を必要としない範囲の契約しか締結できません。
法人
信用が高い
法人は倒産しない限り、責任は法人が負うため、社長が無一文であったとしても、債権回収の期待ができます。
一般的に考えても、個人事業主と取引するか、同じレベルの社員がいる法人と取引するかを考えると、法人と取引するほうが安心できますね。
会社が全責任を負う
先ほど述べたように社長の個人資産が0円であったとしても、会社の預貯金に1億円あった場合、債権者は会社の預貯金1億円から回収ができます。
ただし、企業間もない会社の場合、借入金などは、代表取締役が個人で連帯保証している場合が多いので、責任を免れるかどうかは微妙です。
建設業許可は会社に対して与えられる
建設業を営む上では、法人として建設業許可を取得しておけば、代表者が変わっても建設業許可は継続できます。
つまり、一人親方の株式会社を設立して、将来、ご子息が後を継ぐ場合であっても、建設業許可を取得していればそのまま継続できます。
法人の種類
会社といっても様々な形態があります。
一般的に有名なのは「株式会社」ですが、それ以外に「合名会社」「合資会社」「合同会社」などもあります。
株式会社
株式会社といのは、
「債権者に対して間接的に有限責任を負う社員だけで構成される会社」
です。
つまり、自身が会社に出資した額以外に、債権者に対して責任を負わないという事です。
もっと具体的に言うと、
Aさんが100万円をB社に出資した後、B社が、C社との取引で1億円の負債を負った場合、AさんはB社に出資済みの100万円のみC社に回収され、残りの9900万円の債務は負担しなくても良いという事になります。
持分会社
持分会社というのは、社員がそれぞれ出資持分を持っている会社で、「合名会社」「合資会社」「合同会社」にわかれています。
合名会社
合名会社は「直接的に無限責任を負う無限責任社員だけで構成される会社」です。
つまり、出資者は債権者に対してすべての責任を連帯して負う事になります。
債権者は、会社に対いて請求することも出来ますし、出資者(社員)に対して全額請求することも出来きます。
合資会社
合資会社は「直接的に無限責任を負う無限責任社員」と「直接的に有限責任を負う有限責任社員」とで構成される会社です。
合名会社は出資者の負担が大きいため、出資者を増やすため、有限責任社員を追加した構造になっています。
合同会社
合同会社は「有限責任社員だけで構成される会社」です。
合同会社の出資者の責任は株式会社と似ています。
「合名会社」「合資会社」はあまり一般的ではないので、これからは「株式会社」と「合同会社」について設立の流れを説明していきます。
会社設立の流れ
実際に会社を設立するためにはどのような手順を踏まなければいけないのでしょうか。
これから、「株式会社」と「合同会社」の設立手順を見ていきます。
株式会社
株式会社の設立は二つの流れがあります。それは、「発起設立」と「募集設立」です。
基本的には「定款」→「出資」→「登記」という流れになります。
では、具体的にみていきましょう。
①設立方式の決定
株式会社の設立では次の二つの方法があります。
- 発起設立
- 募集設立
発起設立というのは、発起人のみが出資し、会社を設立する設立方式です。
募集設立というのは、発起人が出資をしますが、より多くの出資者を発起人以外から募集する設立方式です。
一般的には、新規会社設立の場合に実績がないので募集設立をしても出資者が集まらないので、よほどのインパクトのある事業計画や個人での実績を持った上での設立でなければ、発起設立になると思います。
まぁ、知らない人にわざわざ出資することなんてないからね。
②定款作成
発起人が会社の設立をおこなうのですが、必ずやらなければいけない事があります。
それが、定款作成です。
定款って何?
定款というのは会社の重要な決まり事の事です。
会社というのは団体になります。団体を構成するうえで最低限決めておかなければいけない事や、後から簡単に変更されてはいけない事を定款として作成しておくことで、いわゆる、会社の中の憲法のような位置づけになります。
定款の中でも重要度に応じて3段階の記載事項があります。
- 絶対的記載事項
- 相対的記載事項
- 任意的記載事項
絶対的記載事項
絶対的記載事項というのは定款に絶対に記載しなければいけない項目になります。
この絶対的記載事項に漏れがあった場合は、定款自体が無効になります。つまりやり直し。
絶対的記載事項には、次のような項目があります。
- 目的
- 商号
- 本店の所在地
- 設立時出資財産の価格またはその最低額
- 発起人の氏名または名称および住所
- 発行可能株式総数
この中でややこしいのは「設立時出資財産の価格またはその最低額」と「発行可能株式総数」です。
設立時出資財産の価格またはその最低額
設立時に出資金の額を決めるのですが、「価額またはその最低額」とあります。
この理由は、会社が設立していない段階で、出資金の額を予想して記載することになるのですが、当初1000万円出資予定であったとしても、何らかの原因によって、800万しか調達できなかった場合に、定款に1000万円と記載してしまっていた場合は、定款変更の手続きが必要になってしまいます。
価額というのは1つの値ですが、最低額というのは下限値ですので、最低額を500万にしておいて、実際の出資権は1000万という事も可能です。
発行可能株式総数
発行可能株式総数とういのは会社が発行できる株式数のことです。
この発行可能株式総数は「③定款認証」後に決めてもいい項目です。ただし、会社設立までには決めておく必要があります。
そして、発行可能株式総数は公開会社の場合は設立時に発行される株式の4倍以内という制約がありますが、個人で会社設立を使用とする場合は、非公開会社で設立するはずですので、この点はあまり関係ないかもしれません。
どうしても、公開会社にしたいという場合は、設立に詳しい行政書士や司法書士に相談してみてください。
恐らく、小さな工務店や土木工事会社を設立する場合は、非公開会社での設立を進められると思います。
相対的記載事項(変態設立事項)
相対的記載事項というのは決めておかなければ会社の財産的基礎を脅かす項目になります。
相対的記載事項には次のような項目があります。
これら4つの項目は「変態設立事項」「危険な約束」と呼ばれることもあります。
- 現物出資
- 財産引受
- 発起人の報酬
- 設立費用
任意的記載事項
任意的記載事項は決めておかなくても良いのですが、定款で決めておくことで容易に変更することを防ぐことができます。
任意的記載事項には次のような項目があります。
取締の員数なんかをかんたんに変更できてしまって、従業員100名の会社で50名の取締役なんてことになったら、取締役会を開いても恐らく何も決まらないですしね。
- 取締役の員数
- 決算期の定め など
③定款認証
定款を作成したら、公証人の認証を受けなければ効力を生じません。
また、後々に定款が正しいかどうかが問題となった場合に、公証人の認証を受けていれば定款が真正に成立したものとして保障されますので、定款の記載をめぐる紛争の防止にもなります。
この会社設立時の定款のことを「原始定款」といいます。
発起設立の場合は「④(発起設立)出資の履行」へ
募集設立の場合は「⑥(募集設立)株式引受人の募集と割当」へ
④(発起設立)出資の履行
発起人は設立時発行株式を引き受けた後、遅滞なく、引き受けた株式の全額の払込をしなければいけません。
また、現物出資するんであればその財産の全部を給付する必要があります。
これらの出資の履行をしなければ、一定の猶予の後に、株主となる権利を失う事になりますので注意が必要です。
⑤(発起設立)設立時役員等の専任
発起人の出資の履行が完了した後は、会社設立の最終チェックの段階になります。
この最終的なチェックというのは出資された財産等が妥当であるか、設立手続きに法令違反や定款違反がないかをチェックします。
このチェックする人の事を「設立時役員等」といいます。
「設立時役員等」は発起人の議決権の過半数で決定されます。
「⑨設立登記」へ
⑥(募集設立)株式引受人の募集と割当
募集設立の場合、発起人は1株以上の割当をしたのち、募集株式の内容を定めます。
募集株式の割当については、発起人が自由に決定することができ、応募人数に応じて均等に割り当てなければいけないわけではありません。
このサイトをご覧の方々にとっては、募集設立をする方はほとんどいないと思いますので、説明はこの辺で終わります。
詳しく知りたい方は、会社設立に詳しい行政書士か司法書士にお尋ねください。
一般的には行政書士よりも司法書士の方が会社設立には詳しい方が多いです。許認可を伴う場合は行政書士と司法書士の両方相談しておくとよいでしょう。
⑦(募集設立)出資の履行
発起人による割当後に、株式引受人は決められた期間内に払込金額全額の払込をしなければいけません。
注意点は、株式引受人が期間内に払込を行わなかった場合、株主となる権利を失います。
このとき、発起設立の発起人のように失権までの猶予はないので、期間が過ぎればその時点で株主となる権利を失います。
⑧(募集設立)創立総会
募集設立では株主である発起人と出資者が集まり、設立に向けて最終的な意思決定を行います。
設立総会で設立時役員等の選出が行われます。
創立総会では、議題の決定だけではなく、定款変更や設立自体の廃止についても決定することができます。
「⑨設立登記」へ
⑨設立登記
「発起設立」「募集設立」共に、最終的には、本店所在地で設立の登記を行う事によって株式会社が成立します。
意外と簡単なんだね。
いえいえ。
各手順の中で細かい要件が山ほどあります。
そのため行政書士と司法書士に依頼したほうがいいですよ。
許認可が絡まない場合は司法書士だけで大丈夫ですね。
そうなんだ。
定款認証は公証人の認証が必要になりますが、それ以外はご自身で手続き可能です。
しかし、本業に影響がでるくらいなら専門家に依頼したほうがいいと思います。
合同会社
合同会社の設立は株式会社よりシンプルです。
基本的には株式会社同様に「定款」→「出資」→「登記」という流れになります。
では、具体的にみていきましょう。
①定款作成
合同会社も株式会社と同じく団体になります。団体を構成するうえで最低限決めておかなければいけない事や、後から簡単に変更されてはいけない事を定款として作成しておくことで、いわゆる、会社の中の憲法のような位置づけになります。
定款の中でも重要度に応じて3段階の記載事項があります。
株式会社と比べて若干項目に違いがあります。
尚、合同会社の定款には公証人の認証は要求されていません。
絶対的記載事項
- 目的
- 商号
- 本店の所在地
- 社員の氏名または名称および住所
- 社員が無限責任社員または有限責任社員のいずれであるかの別
- 社員の出資の目的およびその価額または評価の標準
相対的記載事項
- 代表社員の定め
- 社員退社に関する事項
- 利益配当に関する事項
- 会社の存続期間
- 解散事由に関する事項
- 残余財産の分配の定め など
相対的記載事項
- 事業年度
- 役員報酬 など
②出資
合同会社の出資の内容は金銭等になります。
合同会社と同じ会社分類である持分会社には合名会社と合資会社があり、それらの無限責任社員は金銭等の出資以外にも労務や信用による出資も可能です。
なお、合同会社の出資の履行期限は設立登記までになります。
③設立登記
株式会社と同様に、本店所在地で設立の登記を行う事によって株式会社が成立します。
以上で設立の流れにつての説明を終わります。
実際はもっとややこしいんでしょ。
そうですね。
書類の書き方や細かい要件、機関設計など
まだまだ説明していないことがたくさんあります。
建設業許可を取得する場合の会社設立時の注意点
建設業許可を取得することを目的にしている場合、次の2点は必ず確認しておきましょう。
- 定款の目的
- 資本金の額
- 役員の登記
定款の目的
建設業で会社を設立するときに、定款を作成します。
この時の「目的」事項は絶対的記載事項となり、必ず記載しておかなければいけません。
この「目的」欄の書き方によって、建設業許可が取れない事もあります。
例えば、「目的:造園工事業」としていた場合、のちに、「左官工事業」でも建設業許可が必要になった場合に定款変更しなければいけないことになってしまいます。
そのため、原始定款での目的の記載方法は専門家のアドバイスを受けたほうがよいかもしれません。
資本金の額
建設業許可を取得するために要件の一つに資金的な要件があります。
一般建設業の場合資本金500万以上必要となり、資本金要件を満たしていなければ、銀行口座の残高証明が必要となります。つまり、キャッシュで500万円の要件をクリアしなければいけないのです。
尚、特定の場合は4000万以上が要件となります。
役員の登記
建設業許可を受けるためには「経営管理責任者」の要件をクリアする必要がります。
この要件の一つが役員の期間です。
将来的に後継ぎとなる人が決まっているのであれば、設立段階で役員として登記しておくことをお勧めします。
建設業での会社設立のまとめ
会社設立は専門にしている行政書士や司法書士に依頼すれば、問題く設立できてしまいます。
しかし、建設業許可を取得するために会社を設立する場合、そのことを事前に専門家に伝えておいてください。
そして、ご自身でも必要な要件を満たしているかは最低限確認できるようにしておくことをお勧めします。
建設業許可に限らず、許認可が必要な場合は許認可要件を確認して、設立しましょう。